恋をせずにはいられなかった。
春の風が吹く。
ふと視界に入ったやわらかな金色の髪に、視線は吸い込まれるように動く。
同じとき私を見つけたのは、大きな青色の瞳。それは、どこかの時から固まっていた私の心をノックするのに、十分過ぎるほどの力を持っていた。
「……クラウド?」
新社会人。23歳。上京して人生はじめての引っ越し。
親切な大家さんのいる天望荘という名のアパートで再会した「かつてのお隣さん」。
「……ティファ?」
これから自分の帰る場所となる、荷物も何も届いていない部屋に、はじめて鍵を開け入ろうとしたとき。
私の隣の部屋、202号室から出てきたのは……忘れるはずもない、大切な初恋の人。
「……、やっと会えた」
クラウドが小さくそう呟きながら見せた、泣き出しそうな表情を、私は今でもよく覚えている。
これは何の変哲もない……私たちふたりの物語。